お母さんシンガーソングライター 始まりの物語
※フィクションです。登場する人物や地名は実際のものとは関係ありません。
第13話:ひがし野ひろしま音楽祭 当日後半
英語幼児園のステージ発表が終わると同時に、それまでステージを取り巻いていた観客は、引き潮のようにスーっと引いては辺りに消えて行った。
こういった観覧自由のステージでは、家族の観覧であったり、お目当ての出演者が終わると、観客も入れ替わることが多いのであろう。
沢山の観客の前に立つのは、とても緊張するだろうし目が回りそうだが、お客さんのいないステージに立つのは、それはそれで、精神的に20分間ステージをやり遂げられるだろうか、と別のプレッシャーを感じた。
次の出演者は私と同じく、一人でステージに立つオカリナ奏者だった。
オカリナの先生をしているのだろうか、その生徒さんかな、といった同年代の婦人たちが観覧席の前の方に座り、彼女の演奏を見守っていた。
目の前の客席に座っている人はすっかり少なくなったが、 オカリナ奏者の人は、気にする様子もなく、朗らかなたたずまいで、演奏を始めた。
さっきまでの、ステージ近くの賑わいで気がつかなかったが、会場全体を見回すと、
会場内の端のほうでステージを遠巻きに見ている人や、 会場内を移動している人、会場の両脇にある屋台に並んでいる人、屋台で働いている人、ステージをサポートしている人など、それぞれの場でステージをなんとなく聴いている人は、意外といるのだ。
そうした人たちの耳にも優しく届ける音色、そんな風にオカリナ奏者の方の演奏は聴こえ、凛としてとても素敵だった。
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オカリナ演奏が終わり、いよいよ私の番だった。
果たして私の時は、もっと観覧席に座っている人数は減った。
引越してきてまだ半年。 見に来る家族といえば、夫と2歳になった息子のみ。
その二人(というか、おんぶ紐で一体になっているので一組というべきか)は、私がセッティングしている間に、その少ない観客や、周りの人に歌詞カードを配ってくれていた。
夫と息子以外に、「自作の歌を歌うから聞きに来てね」なんて言える友達は、、、あ!一人いた。
夫の職場の若い男性で、私たちの数か月後にご夫婦で転勤してきた渡(わたり)さん。
実は渡さんも、学生時代に音楽をしており、友人と二人組でオリジナル曲を作っていたということで、一緒に食事をした際に、私もすっかり渡さんと意気投合し、親しくなったのだ。
今日の音楽祭に出ることも、夫が伝えてくれていた。
セッティングが整うまで、ステージの端から夫のいるあたりを見ていると、その渡さんが来てくれていた。
どうやらこの会場で、私のステージを目当てに来てくれたのは、夫と、夫の抱っこ紐の中で前向き前抱っこでぶら下がっている息子・和博と、渡さんの3人のようだった。
まずはその3人の観客と、この会場の中のどこかで聴いてくれている人に向かって歌を届けよう。
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司会の方に紹介され、いよいよ私の出番となった。ステージの真ん中に据えられたキーボードの前に座り、マイクに向かう。
「しまひろこと言います。学生時代からオリジナルソングを趣味で作ってきました。今日は本当に久しぶりに人前で歌わせていただくので、大変緊張していますが、このような機会を与えてくださったことに感謝しています。」
用意していた最初の挨拶の言葉。
それすらも、どんな調子で話したのか、覚えていない。
久しぶりに聞く、マイクを通した自分の声。思った以上に弱弱しかったように思う。
オケが流れ、それに合わせて弾く鍵盤の手も震え、いつしか手は止まっていただろう。
ただ、もう必死で歌っていた。
客席のずっと後ろの方に立っている、夫と息子と渡さんの3人の姿を、ときどきチラリと確認しながら。
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とにもかくにも、歌い切った。らしい。
歌い終わった後、ステージから見上げた空が、とても清々しかったことだけは、はっきり覚えている。
真剣に聴いている人は3人だけの、私のお母さんになってからの初ステージだったが、ステージをやり終えた私は、とても満足していた。
ここに至るまでの日々の葛藤、さっきまでの緊張もすべて含め、とても楽しい時間に感じた。
そして、ステージを降りた後、夫たちのいる場所に向かいながら、こう思う自分がいた。
私が必死で歌おうと、歌うまいと、世界は変わらず動いている・・・。
私の心の中でさらに思ったことを正直に言えば、
私がちょっとやそっと、下手な歌うたったり、失敗したって、爆弾が爆発するわけじゃないし、世の中的に、なんてことないよ。
だったら?
だったら、思い切り好きな歌を歌った方がいいじゃないか。
もっともっと思い切りやったらいいじゃないか。
今日がスタートなんだ。
まずは自分で歌って、自分をもっとハッピーにしよう。そして、歌う私を支えてくれる家族に、せめてハッピーを還元しよう。
「まずは自分で歌ってハッピー子育て」
ここからスタートだ。
弾き語りで、お聴きください♪
2008年6月の初ステージで歌った、お母さんシンガーソングライター初のオリジナル曲『僕らの天使』♪
しまひろこ資料館
貴重な資料が発見されました! (笑)
学生時代に作った歌を、少しだけ、今の気持ちでも書き直しました。
当時から「永遠のカタチ」というキーワードが特に気に入っていましたが、2017年リリースしたCDの中では、「永遠のカタチ」というタイトルで全面歌詞と曲調を改め収録しました。そのきっかけにもなったK先輩との再会、そして東京コンサートまでの道のりを描いたブログ小説「永遠のカタチ」もぜひご覧ください。
お母さんになって、初めて作ったオリジナル曲♪
『僕らの天使』誕生、初ステージ披露は、この音楽祭でした!
後日、修正を加え、CD収録のカタチになった様子がうかがえます↓(自分でも忘れていました・笑)
その後、初期の子育て広場ライブで良った曲に。2013年リリースのCROON版CD『大好き(3曲入り)』にも収録へ(完売)。
小説「SHALL WE SING?」~ひがし野ひろしま市編~インデックスページへ~
リアル★お母さんシンガーソングライターしまひろこの現在の挑戦は、HP TOPからご覧ください♡いつも応援頂き本当にありがとうございます!