「Shall we sing?」第3話

~ひがし野ひろしま市編~
お母さんシンガーソングライター 始まりの物語

※フィクションです。登場する人物や地名は実際のものとは関係ありません。


第3話:夢★もくば


子育て広場「夢★もくば」は、車でブールバールを東条駅の方向にむかって走り、駅の少し手前で左に曲がったところにある「東条プラザ」というショッピングセンターの中にあった。

この東条プラザは、少々年季の入った建物だった。おそらく、イオンやイトーヨーカドー系列といった類ではなく、地元に古くからある独立系ストア、といったところだろうか。1Fが駐車場。古いながらも6F建ての建物の中には、2Fにスーパーや専門店、3Fにはレストラン、ペットショップ、洋品店、4F-5Fにはスポーツクラブ、6Fには幼児園や、文化センターもあり、なかなかの充実ぶりだ。

その2Fの一角に、「夢★もくば」があった。

息子を抱っこし、その自動ドアをくぐる。

「こんにちは~!あら、初めての方かしら?」

と、ベージュの生地にもくばの可愛いワッペンがついたエプロン姿の、スタッフと思われる50代くらいの女性が、カウンター越しに声をかけてくれた。

「あ、はい。先日、越して来まして、市の広報を拝見して来ました。いきなりですけど、遊べますか?」

「もちろん、いいですよ。じゃあ、初期登録をするので、中に入って、奥の丸いテーブルのところで待っとってね。」

中に入ってみると、お部屋は仕切りのない広いお部屋で(100平米くらいあるだろうか)、その中を、角ごとになんとなく4つのエリアに分かれているようだった。

4つのエリアは、木のレールと電車のおもちゃエリア、ままごとキッチンエリア、丸テーブルとソファーのある絵本のコーナ、赤ちゃんが寝っ転がって遊べるような柔らかマットと手ざわりの良いおもちゃのエリア。その間には、キッズハウスや、木の滑り台も配置されていた。

息子は早速、木のレールと電車のコーナーに目を付けたようだった。

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丸テーブルのある絵本のコーナーで待っていると、カウンターで挨拶をしてくれたスタッフさんが、登録カードを持ってきてくれた。

「私は、施設長の岡地です。 よろしくね。 この広場は、半年前にここにオープンしたばかりなんよ。それまでは私たちが、、、あっ、そうそうここは『NPO法人 子育てネット 夢★もくば』が運営してるんだけど、それまでは、 駅裏で自分たちで場所を借りて広場を開いとってね、ママたちにも1回100円の負担で来てもらってたんよねぇ、、、。でも、やっと市の子育て広場運営事業の委託を受けることができて、それで、この東条プラザの中に場所も用意してもらえて、移転オープンすることができたんよ~。」

NPO?市からの委託??そーなん?

小柄で、ショートヘアにクリクリとした目が印象的な岡地さんは、早く遊びに行きたがっている息子に目を配りながら、早口に快活に、この『夢★もくば』の仕組みや利用の仕方を説明してくれた。

「それからは、ママたちにも無料で利用してもらえるようになったし、駐車場もあるし、、、あ、来た時にカウンターで駐車券通せば4時間まで無料になるからね!」

とにかく息子と行ける「楽しい居場所」を求めることにしか頭になかった私だが、そうした居場所は、こうやって運営してくれている人がいて、地域と行政と掛け合って作ってくれている場なのだと知り、本当にありがたく思った。

「 お弁当を持ってきたら、向こうの『イベントルーム』で食べれるから、10時から15時までのんびりもできるし。お弁当持ってきてなくても、隣のスーパーで買ってこれるからね!」

これまで板橋で通っていた児童館は、午後からは小学生も通ってくる場所(どちらかというとそっちがメインユーザー)だったので、 なんとなく学校のような建物で、固い印象があった。お部屋もいくつかの教室に分かれている、といった感じ。何かイベントがあるときは、人も多く、スタッフ先生も入って、みんなで一緒に体操したりプログラムをして遊べるのだか、出入り自由の開放の日は、スタッフさんは事務室からは出てくることはあまりなく 、一人で来るとポツン、、、としてしまうこともあった。

そうした児童館と比べて、ここはとても居心地がよさそうだった。温かみのあるカーペット、ソファ、小さなテーブル。そしておもちゃも、良質なものが揃っていると、見てすぐに分かった。子どもに遊ばせてやりたいなって思ってお店で見ていたけれど、家庭で買い揃えるにはちょっと手を出しにくいな~と思っていたものばかり。

そして、4つのコーナーのどこにいても、お部屋としての一体感があり、カウンターのスタッフさんもすぐの距離だ。そして、見ていると、他にも何人かエプロンを付けたスタッフさんがいて、広場で遊んでいる親子と談笑していたりする。

ショッピングセンターの中にあるというのも、画期的だった。帰りに食品や日用品も買って帰れるし、ただ広場に行くだけでなく、「今日はあのパン屋で息子と一緒に食べようかな」とか、「ペットショップに寄ってみようかな」「今日は東条プラザのイベントと合わせて行こう」とか、プラスの楽しみもできそうだ。

初期登録が終わると、息子はさっそくお目当てのおもちゃのコーナーに勢いよく向かい、遊び始めた。

ここは、きっと私たち親子の、『もう一つのお部屋』になる。

そんな気持ちがした。

つづく

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