「Shall we sing?」第4話

~ひがし野ひろしま市編~
お母さんシンガーソングライター 始まりの物語

※フィクションです。登場する人物や地名は実際のものとは関係ありません。


第4話:かして どうぞ


息子の名前は和宏(かずひろ)という。

夫の両親が、夫の名前を付けるときに、自分たちの名前の響きを一字ずつ入れて名前を付けていたので、私たち夫婦もそれに習い、「広子(ひろこ)」と、夫の「一彦(かずひこ)」の名前から、一字ずつ響きを取って命名した。意外と簡単だ。

和宏は、平成18年4月1日生まれ。4/1というと、学年で一番最初生まれ?と思われるかもしれないが、実は、日本の学年で言うと、学年で一番最後の生まれの子となる。和宏の年でいえば、平成17年4月2日生まれ~平成18年4月1日生まれまでが同学年となるのである。

あと数時間お腹の中に居れば、次年度の学年最初生まれとなっていたのだが、、、どっちが彼にとって得?だったのかは、わからない。今のところ幼児の彼は、何をするにも月齢で扱われることが多いので、特に同学年の子との差異を意識する機会は少なかったが、子育て広場などで同学年になる子と出会うと、幼児の頃の12か月の心身の成長幅はかなり大きいと思った。

さて、初期登録をした子育て広場「夢★もくば」には、かなりの頻度で通っていた。

和宏のお気に入りのおもちゃコーナーは、木の電車のおもちゃと、トミカがあるエリア。

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このおもちゃコーナーは、男の子に人気だ。和宏も、限られた木のレールを自分なりに組み合わせて、毎回違うコースを作り、新幹線を走らせている。

さらに、このコーナーには、トミカもあった。3段引き出しのあるプラスチックケースの中には、とても綺麗なトミカが勢揃い。男の子たちの目が輝く。棚の横にたたんであるトミカタウンの敷物を広げ、その上で、車を走らせて遊ぶこともできた。

このコーナーだけは木の柵で囲われており、私も柵の中に入り一緒に遊ぶこともあったし、他のお友達も入ってきてスペースが必要な時は、私は柵の外で見守った。

他のお友達が入ってきた時、私がちょっとドキドキして見守っていたのは、新幹線の行方。3両がつながる形の新幹線は、1セットしかなかった。

和宏はお気に入りの新幹線を手にすると、絶対離さず、他の子と取り合いになることも多かった。

じーっと順番を待っている子。

「か~し~て~!」と、声をかけてくる子。

そう言われても、自分のお気に入りを手放せず、遊び続ける和宏・・・。

私の方が見ていられず、

「かずひろ~、新幹線くん、他の子にも遊ばせてあげようよ~。『ど~う~ぞ~』だよ~。」

と私が割って入ると、和宏は取られまいと新幹線を手に背を向けている。

「かずひろ~、 『ど~う~ぞ~』だよ~。」

ここで、私が我慢できなくなり、無理やり新幹線を奪ってお友達に渡そうとして、何度、和宏と格闘したことか。。。

結局、おもちゃを取り上げられて、怒って泣く和宏を横目に、お友達もどこかに行ってしまったり、私たち親子もいそいそと帰ることになってしまったり。

どうぞが出来なくてイライラしたり落ち込んだりしているのは、結局私なのだ。

そんなある時、岡地さんが傍にやってきて

「いいんよ~。ひろくん、まだ遊びたいんだもんね~。もうちょっと〇〇くん、待っとってね~。ひろくん、もうちょっと遊んだら、どうぞできるかもしれないからね~。」

と、明るく声をかけてくれた。

そうやって救われたのは、おもちゃを奪われなかった和宏ではなく、私の方だった。

「まだ一人遊びが好きな頃だもん。それにひろくんは、本当にこの新幹線が好きよね~。どうぞするのは難しいときもあるわよ~。」

広場には0~3歳児対象の親子がやってくる。ちょっと月齢が違うだけで、そして環境によって、心や体の成長段階は様々。初めての子育てでは、まだできないことのへ不安や焦りが、ママをじわじわと苦しめるときがある。

そんな時、こうして一緒に子どもの成長を見守り、声をかけてくれる年長者の存在は本当にありがたかった。

和宏はまだ1歳半を少し過ぎたばかりだ。色々できなくて当たり前だ。できないことを許せないでいるのは私の方。もっとゆったり、今の和宏を見守ってやりたい。

もちろん、その後も「夢★もくば」では、うまく遊べる時も、遊べない時もあった。それでも、家の中で二人きりで過ごすより、ずっとずっと楽しくて、苦しい気持ちになる時も、ずっとずっと楽だった。私たち親子にとってはかけがえのない居場所であり、『もうひとつのお部屋』として通い続けた。

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『夢木馬』 作詞作曲しまひろこ

となりのお姉さんも ちょっと前までは君と同じ
「かして」「どうぞ」が上手く 出来なくて泣いてた

だから君もね ママも 心配しないで
もう少し時間が経てば大丈夫

ユラリゆら ユラリゆら ゆっくり大きくなぁれ
ゆらユラリ ユラリゆら 元気に大きくなぁれ

申し遅れましたが 私はこのお部屋で
一番古いおもちゃの木馬です

たくさんの親子を見守ってきた私です
良かったら君も 背中に乗ってごらん

ユラリゆら ユラリゆら ゆっくり大きくなぁれ
ゆらユラリ ユラリゆら 元気に大きくなぁれ

今日は誰の夢乗せて 揺れる夢木馬

LaLaLaLaLaLaLaLa……

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つづく

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